氷との戦い!「北極点グリーンランド単独行」植村直己

氷との戦い!「北極点グリーンランド単独行」植村直己

2019.03.23

どうも。当サイトを運営している「みっしー」です。

植村直己シリーズも今回で第五回目となりました。

今回ご紹介するのは「北極点グリーンランド単独行」です。

前回の氷の大地に置き去り……「北極圏1万2000キロ」書評から約2年後、植村直己さんは「北極点への犬ぞり単独行」と、「グリーンランド犬ぞり単独縦断」に挑戦します。

どちらも単独で達成した例はなく、成功すれば世界初となる快挙です。

エルズミア島のコロンビア岬

北極点犬ぞり単独行

カナダのエルズミア島のコロンビア岬から出発し、北極海の氷上を通って北極点へ向かいます。

【氷が割れて海に浸かったら死亡】

気温はマイナス51℃ですから、海に浸かったらあっという間に体温を奪われて死んでしまいます。

時折、氷が薄くて突然割れたり、氷同士がぶつかって大きな亀裂ができることもあります。

【氷と一緒に流されたら死亡】

北極の氷は浮かんでいるだけですから、常に移動しています。

大小さまざまで、移動速度も違います。

移動する氷の上に取り残されたら、漂流状態になってしまい、その時点でアウトです。

【氷との戦い】

冒険の序盤から乱氷群に道を阻まれます。

先へ進むためには犬橇が通れるようにしなくてはなりません。

植村直己さんは鉄棒で氷を砕き、ルートを確保することを繰り返します。

いけどもいけども乱氷群で、まったく前に進めません。

さすがの植村さんもネガティブな感情が湧きはじめます。

しかし、乱氷群を抜けなければ北極点にはたどり着けません。

毎日毎日、ひたすら氷を叩き割り、少し進み、また氷を叩き割る。

そんな日々が続きます。

グリーンランド単独犬ぞり縦断

グリーンランド北端の「モーリスジェサップ岬」を出発し、南端の「ナルサスワック」への内陸縦断ルートです。

【氷の裂け目】

グリーンランド内陸は積雪が幾重にも重なって凍った氷の地層です。

所々にヒドゥン・クレバスと呼ばれる深い氷の裂け目があり、落ちたら死亡です。

しかも、表面上は雪に覆われていて見えません。

縦断中、犬が1匹クレバスに飲み込まれてしまいます。

【飢餓】

航空支援による食料補給をしながら進みますが、天候不良や、航空会社との行き違いがあり、補給が大幅に遅れてしまいます。

その間、犬も植村さんも絶食状態で過ごします。

【秘密兵器】

今回の冒険では、犬ぞりに「帆」がつけられるようになっています。

帆を張ると、まるでヨットのような格好になり、風の力を利用して進むことができます。

犬たちのけん引力と、風力が合わさって、軽快に進みます。

帆の推進力のおかげで犬たちの負担が減り、バテにくくもなるという画期的な発明です。

当たり前ですが、風が無ければ利用できず、ただ重いだけの荷物になってしまいます。

あとがき

今回の冒険が今までと違うのは

  • 航空支援
  • 通信支援
  • 莫大な費用
  • 調査協力

この4つの違いがあります。

食料や、道具の調達・交換は航空機が運んできます。

負傷した犬を送り返したり、新しい犬を連れてくるのも航空機です。

前回の冒険「北極圏1万2000キロ」でも航空機による食料補給はありましたが、前もって個人的に手配しておくだけでした。

今回は基地に控えた仲間たちと通信し、必要な時に必要な分、航空機による支援が受けられる形になっています。

犬橇には通信アンテナも装備されており、レーダーによる位置確認などもできるハイテク仕様になっています。

こういった背景があり、今回の冒険は莫大なお金が必要となりました。

しかし、植村さんに協力的な人たちが後援会を作ったり、寄付を募ったりした結果、資金を確保することができます。

なんだか今までの冒険よりハードルが低いようにも感じてしまいますが、いくら航空支援や、通信支援があっても、白熊に襲われたり、海に落ちたりしたときに連絡しても、到着する頃には死んでいます。

リスクの回避にはならず、いずれにしても死と隣り合わせです。

グリーンランド縦断中には学術調査のための氷雪サンプルを採集しながら進みます。

当時は未開の領域だったため、植村さんは研究者の依頼を受け、調査に協力していました。

「北極点グリーンランド単独行」では上述したような初めてのことも多く、そういった面で植村さんが苦戦することもありました。

今まで個人でやっていた冒険が、「北極点グリーンランド単独行」で初めて組織的になった印象を受けました。

組織的に行うのが普通なのかもしれませんが、植村さんだけの奇想天外な冒険感は少し薄れています。