エスキモーと日本人はそっくり!?「極北に駆ける」書評
2019.03.08
どうも。当サイトを運営している「みっしー」です。
登山家・冒険家である植村直己さんのファンで、著書を6冊もっています。
そこで、一冊目の「青春を山に賭けて」から植村直己さんの著書を全てご紹介することにしました。
第一回「青春を山に賭けて」、第二回「エベレストを越えて」に続きまして、第三回目は「極北に駆ける」をご紹介します。
著者について
【名前】
植村 直己(うえむら なおみ)
【生年月日】
1941年(昭和16年)2月12日
【出身地】
兵庫県
【職業】
登山家・冒険家
【経歴】
世界初、冬季マッキンリー(デナリ)単独登頂後、消息を絶つ
登山家・冒険家として数々の功績をもつ植村直己さん。
1984年、冬季マッキンリー(デナリ)に入山、単独登頂成功の通信を最後に消息不明に。
同年に国民栄誉賞を受賞。
極北を駆ける目的とは
1972年の9月、植村直己さんはグリーンランド北部の村落「シオラパルク」を訪れ、村人として一緒に暮らし始めます。
シオラパルクにはエスキモーと呼ばれる民族がいて、極寒の地で狩猟をして生活し、犬ぞりを駆る文化をもっています。
植村直己さんはなぜ極寒の地に訪れたのか。
その理由は植村直己さんの夢を実現するためでした。
「南極大陸横断」
それが冒険家、植村直己さんの次なる目標でした。
南極大陸横断を達成するためには南極という極地で生き抜く力を持っていなければなりません。
そこで実際に極地で生きる人々と暮らし、極地に体を順応させ、さらには犬ぞりの技術を学んで、氷の大地で移動する術を会得する。
それが今回の目的でした。
エスキモーの文化
「極北に駆ける」を読んでいて驚くのはエスキモーとの文化・習慣の違いです。
※記されたのは1972年当時であり、現在は近代的な生活をしています
【主食は生肉】
アザラシや、セイウチ、クジラ、白熊を狩猟し、その生肉を食べます。
極寒の地ですから、外に出しておけば凍ります。(12月の気温はマイナス30度を超える)
食べる分を解かし、調理はせずに生で食べます。
狩猟した生物の表皮は防寒具や、犬ぞり用のムチに加工します。
生肉のほかには魚や鳥を獲って食べていました。
【男女の秘め事は自由で開放的】
日本人のような観念とは全く違っていて、かなり自由に、しかも男女問わず積極的です。
結婚していても関係ないようで、夫の前で妻が誘ってくるという場面もありました。
【お酒大好き】
みんなお酒が大好きです。
お酒が好きな気持ちは良くわかりますが、シオラパルクのエスキモーはお金をすべてお酒に変えてしまうほど大好きです。
そもそもエスキモーたちは狩猟で生きているので、お金は必要ないのです。
ちなみにお金は狩猟した動物の皮などを街で売ることで得ています。
ただ、お酒についてはデンマーク政府が販売量を制限しています。
20歳以上の男女1人ずつにデンマーク政府から酒類販売実績手帳が発行され、それをもとに1ヶ月間の販売量を制限しています。
お酒の販売限度は1か月にビール小瓶30本まで、ウィスキーについてはビール20本分に換算されます。
つまりウィスキーを1本購入したら、ビールは10本まで。
これで1か月の販売限度になってしまいます。
エスキモーがほしい分だけ販売していると、酒びたりの生活になってしまう恐れがあるため、このように制限しているそうです。
極寒の地ではお酒を造るための材料が作れないことや、気温が低すぎて発酵させることもできないことから、もともとお酒自体エスキモーの文化にはなかったのですが、1900年ごろ、デンマーク遠征隊によって持ち込まれたようです。
【エスキモーのトイレ事情】
家の中に置いてあるバケツで済ませます。
ある程度溜まったら、外に捨てると思われます。
排泄物でも凍ってしまえば臭わないので、廃棄場所さえ決めておけば問題ないのかもしれません。
また驚くことに、排泄したくなったら、誰かがそばにいようとお構いなしにするそうです。
植村直己さんは親しい人の前なら何とかできるようになったと記しています。
家の外は極寒ですし、水道管なんて通っているわけありません。
なので水洗トイレは設置できません。
汲み取り式では凍ってしまいますし、バケツにするのが最善で、それに客人がいるから外(マイナス30度)で…というわけにもいかないのでしょう。
【犬の扱い】
エスキモーにとって犬はペットではありません。
基本的な考えとしては道具に近いです。
弱って使い物にならなければ、食料と毛皮にされてしまいます。
しつけに関してもかなり過酷です。
犬が可哀そうで、読んでいて辛くなる場面もあります。
【外見が日本人に似ている】
「極北に駆ける」の中にあるエスキモーの写真などでわかるのですが、外見は日本人とそっくりです。
極北の地で生きる民族が日本人と同じ顔をしているのも驚きました。
エスキモーが日本に来て、日本の服を着ていたら、街で見かけても日本人にしか見えないと思います。
犬ぞり単独行3000キロ
エスキモーの村「シオラパルク」で生活し、犬ぞりに必要な技術・道具を得た植村直己さんはある計画を実行します。
その計画とはグリーンランド北部のシオラパルクから1500キロ南に進んだ場所にある町「ウパナビック」に行き、またシオラパルクに帰ってくるという犬ぞり単独行3000キロの旅でした。
エスキモーたちは皆、危険だからやめた方がいいと植村直己さんを止めます。
しかし確固たる決意を胸に植村直己さんは出発します。
あとがき
私が最初に読んだ植村直己さんの本は今回紹介した「極北に駆ける」です。
そもそも植村直己さんを知るきっかけとなったのは、クレイジージャーニーというテレビ番組でした。
クレイジージャーニーは世界をめぐる変わった旅人を紹介するテレビ番組で、その番組の中で「植村直己冒険賞」の受賞者が出演した回をたまたま見たのです。
植村直己冒険賞とはなにか?
気になって調べた結果、数々の偉業を成し遂げた植村直己さんという人物に急激に惹かれました。
そこで植村直己さんを知るべく、著書をまとめて買ったという経緯があります。
どれから読むか迷ったのですが、エスキモーという民族に興味があったこともあり、まず「極北に駆ける」を選びました。
「極北に駆ける」でのエスキモーと植村直己さんの交流は、植村直己さんの誠実さ、優しさ、お茶目なところなどを深く感じることができます。
また犬ぞり単独行3000キロについては極北という弱肉強食の世界と、常に死と隣り合わせの氷の大地を孤独に駆ける植村直己さんの姿が描かれており、途中で出会うエスキモーたちとの交流は植村直己さんと同じように読者側もホッとします。
犬が大好きな方にはオススメできませんが、極地で生きることの厳しさや、エスキモーの文化を学べる貴重な本です。